契約同居と愛情ご飯~統括部長の溺愛独占欲~
再会は偶然に
「かんぱーい!」
「乾杯!」
 あちこちでグラスが交わされる。ワインがメインに、シャンパンや、日本酒もある。
 飲めないひとのためにソフトドリンクや、度数の低めのカクテルなども種類豊富。
 並んだ席のはしについて、目の前のテーブルにはバルらしく、肉とチーズ、それから野菜料理が多かった。安いご飯ものや麺のたぐいはほとんどない。
 女子も好むであろうタイプの料理や酒が出てくるくらいには、この飲み会は気を使われていると言えた。
 下心もいくらかは入っているだろうが。
 すなわち、いい気分にさせて、持ち帰り……など。
 だがそれを目当ての女子もいるだろうから。
 ある意味、win-winなのかもしれない。
「これ、おいしいですね!」
 まず取ったのはチーズラクレットだった。ひとくち食べて、鈴は顔を綻ばせてしまう。
 テーブルでチーズをかける形式のそれは、出てきただけで、女子の間を沸き立たせた。写真を撮っている子も多くて、あとでSNSなどに載せるのだろう。
 鈴はそれほどそういうものに夢中というわけではなかったが、一応写真を撮っておく。なにかの折に見返せたら楽しいだろう。
「こういうの、見た目だけかと思ってたけどちゃんとうまいなぁ」
 隣に座ってきたのは、他部署の同年代社員・荻野(おぎの)。部署は違うが、ビル内で会えばたまに会話をする仲だ。
 見た目も、超・イケメンではないが、愛嬌のある顔立ちで、背も高くて、明るい性格の彼は女子からの人気もある。
 鈴はいつも話すように、「そうですねー、映えもいいですけど、やっぱり味も大事ですよね!」なんて返事をする。そのまま荻野と話がはじまった。
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