お母さんからの結婚攻撃から見合いしろ攻撃に変わる前、私はめでたく実家を脱出した。

貸倉庫に預けていた家具や家電なども業者や寿退社した女同僚などの手を借りて無事に済ませることができた。


「葵があの会社辞めちゃうとかびっくりしたから。何かあったんでしょ?」

「別に、何もないよ。条件の良いところがあったから、ちょっとね」

「なにそれ、引き抜きってやつ?」

「なんかその言葉聞こえが悪いね。そんなんじゃないよ」

まあ似たようなものではあるけど、この子の旦那は元会社に勤めているから変なことは言えない。

「やりたい仕事だったの。だから思い切って転職したわけですよ」

「ふ~ん、天職ねぇ」


引っ越し手伝いの報酬はお洒落そうな店でのディナーだった。

子供がいるとファミレスばかりでこういった場所は縁遠くなるのだそう。

久々にお洒落な空間に包まれた元同僚の美幸は嬉しそうにしていた。


「んー!美味し―!!もう最高だね。自分だけの為にご飯をゆっくり食べれるなんて贅沢極まりないわ」

「そんな大げさな」

「あー、そんな事言っちゃって~。本当なんだから、葵もそのうちわかるよ」


私には今後そんな予定はないけど、そんなことまで言う事もないかと思い微笑むだけにした。