エリート警察官は彼女を逃がさない

「あの……えっと」
どうしていいかわからないし、恥ずかしいしで意味のわからない言葉を発した私を二階堂さんはそっと話すと私の瞳を覗き込む。

「俺のこと忘れないで」

そういうとチュッとリップ音を立てて触れるだけのキスをした。

「これ、ありがとうございます」
抗議の言葉を上げる暇もなく、そこには今までとは違うビシっとした二階堂さんの顔があった。

お客様としてのその顔に、私も咄嗟に姿勢を正して腰を折る。

「失礼いたします。よい時間を」
いつも通り決められたセリフを言えた自分を褒めたかった。この後、到底仕事になど戻れる気がしない。

「よかった。今日もう終わりで」
私はそう心の中でつぶやいた。


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