エリート警察官は彼女を逃がさない

自分の布団のシーツを取り母が洗濯をしているところへと持っていく。

「遅いわよ。もう十時になっちゃうじゃない。自分でやりなさい」
母の言葉に、私は「はーい」とだけ返事をして、洗濯機にシーツを入れ洗剤を入れてスタートボタンを押す。

こんな風に穏やかな時間を過ごすのは、もう何年振りかわからない。
そんな時、玄関で昔ながらのチャイムが鳴る音が聞こえた。

「おかーさん、誰か来たよ!」
私の声に母がパタパタと廊下を走っていく音が聞こえた。

「帰りなさい!」
洗濯機をぼんやり見ていた私の耳に次に聞こえたのは、父の怒声だった。
何? そう思い私も急いで玄関へと走っていく。そこに立っていた人に私は驚いて目を見開いた。

「征爾さん……」
呟いた私を見ることなく、彼は頭を下げたままだ。あの後、まったく連絡もなかった。

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