ABYSS〜First Love〜
リオ

sideA-2

ユキナリに振られてただ悲しかった。

わかっていたけどこれが現実だと思った。

こんなに泣いたのはいつ以来だろう?

一緒に暮らしていた猫のクロが死んでしまった時よりは悲しくないだろう。

そう言い聞かせても涙は止まらなかった。

もうどうでもいい。

この恋は終わらせるしかない。

ユキナリがオレなんか好きになる筈がない。

「リオ。」

ドアの前でオレの名前を呼ぶアキラさんの声が聞こえた。

「ゴメン。今は一人にして。」

アキラさんが心配するからオレはドアを開けなかった。

「リオ。大丈夫だから。
あんまり泣くなよ。」

そう言ってアキラさんが帰っていく足音が聞こえた。

せっかく来てくれたのに
何も話さずこのまま帰してしまうのはあまりにも申し訳なかった。

オレはドアを開けた。

帰りかけたアキラさんは戻ってきてオレを抱きしめて頭を撫でてくれた。

「アキラさん…ダメだった。」

何にも言わずアキラさんはオレが泣き止むまでただそばにいてくれた。

次の日もアキラさんはまた遊びに来てくれた。

何やら色んな色のストローを持ってきた。

「今日はこれでヒンメリを作ろう。」

「ヒンメリ?」

「モビールって言った方が分かりやすいかな?」

アキラさんはモノを造るのが好きな人だ。

「モビール?」

アキラさんはオレが何にも知らないから余計に教えるのが楽しいと言った。

ストロー切って糸を通してピラミッド形やダイヤ形、星形にしてそれを繋げて天井から吊るしてみる。

「なんかいいだろ?

モノを造るってさ。」

「へぇ。可愛い。」

「これ、海の家に飾ろうと思って。
ちっとはオシャレになるだろ?」

「あ、オレにくれるんじゃないの?」

「欲しかったら自分で作れよ。

どうせヒマなんだろ?

ヒマだとくだらない事考えるから
手を動かすといい。」

「アキラさん、明日病院に連れてってくれない?」

「いいよ。」

オレは余ったストローで夜通しヒンメリなるモノを作った。

ネットで調べて色んな形を作って見た。

陶芸とは違ってもっと手軽に作れる物をアキラさんが探してきてくれたんだと思った。

次の日アキラさんが迎えに来てオレは病院に行った。

「だいぶ良くなりましたね。

消毒にはもう来なくていいでしょう。

でも家で必ず毎日ガーゼを替えてください。

それから海はもう少しだけ我慢して下さい。」

捻挫はだいぶ良くなって
傷もだいぶ癒えてきた。

それでも心の傷はまだ全然癒えなかった。

オレはあれから一度もユキナリに逢ってない。

ユキナリのことを考えたくない夜はヒンメリを作ったがそろそろ飽きてきた。

ユキナリがいる夏の間はあの海には行かないことにした。

どうせ海にはまだ入れない。

あと1か月どう過ごそうか?

オレはあれからまだ一度もユキナリに逢えないでいた。







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