遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
8.寄っていきませんか
 デート当日、亜由美はオフホワイトの7分袖のシースルーブラウスとピンクの花柄のフィッシュテールのスカートを合わせる。

 玄関前の鏡で全身をチェックして、よしっ!とマンションを出た。

 亜由美の家から待ち合わせ場所である駅前までは10分とかからないけれど、念のために20分ほど早く家を出る。

 当然、早く着きすぎてしまうわけだが、歩きながらふと思い返した。

 亡くなった父にお金、約束、時間は信頼を得るために必ず守りなさいと言われていたけれど、いつも早く来すぎてウザい、と元彼に言われた思い出だ。

 鷹條に嫌われたくはない。
 けれど、約束を守らないことは自分の中ではありえない。

 迷っているうちに駅に着いて、待ち合わせ場所に鷹條の姿を見つけて、亜由美はその場に崩れそうになる。

 そうだった。この人はそんな心配しなくていいのだった。

「鷹條さん、ごめんなさい。お待たせしました?」
「いや、勝手に俺が早く来て……てか、亜由美……」

 鷹條があまりにじっと見つめてくるので、亜由美はどこかおかしいのかと焦ってしまう。
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