十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
第1章 禁断の再会
彼の唇が最初に触れたのは、私の左薬指。

「んっ……」

温かく、ふんわりとした彼の優しい唇が、私の指に何度も触れる度、私の体は甘く痺れていく。

「お前の指、甘い」

彼がそういうと、私の指を1本ずつ丁寧に舐め上げていく。
指の付け根から関節、爪まで触れないところがないように、丁寧に。

「舐めないで……」

私は懇願する。
恥ずかしくて、心臓が破裂するかと思ったから。
でも、彼は私の言葉なんかでは、やめてくれない。
まるでアイスキャンディーを楽しむ子供のような顔をしながら、私の目を見ながら

「美空の指、最高に可愛くて、旨い」

と、吐息混じりに語りかけてくる。
ずるいと思った。
そんなことを彼に言われて喜ばないほど、私はまだ彼への気持ちを捨てきれていない。

彼の唇が徐々に、私の手の甲、二の腕、鎖骨、首筋に痕を残しながら、上へ上へと進んでいく。
それと同時に、今度は彼の……魔法を生み出す指に、私の指が絡められる。
体温が絡み合い、この熱はどちらの熱さなのか分からない程。
そうしている内に、いつの間にか彼の唇が、私の唇に触れる一歩手前まできている。
彼が呼吸をする度に、彼の息が私の口にかかる。
彼の目の中に、私が彼に蕩かされた顔が映る。

あなたが、欲しい。

お互いの目が、そう言っていると分かった瞬間、彼は私の唇を貪り始めた。
舌で唇を舐め、空間を作り、一気に口腔内へと侵入してから、私の舌に吸い付いてくる。
私は、それを受け入れてはいけない身のはずだったのに、何もかも忘れて彼に全てを委ねたいと思ってしまった。
本来は、許されてはいけない行為だとしても、私は彼の全てに再び囚われてしまった。


だからせめて、この夜が明けるまでの夢であると、思い込むことにした。
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