十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
第4章 本物の結婚指輪
中野さんとの入籍予定日まで、残り3日となった。
私が、いつもの場所にいる時、突然中野さんから電話がかかってきた。
普段、私の居場所も考慮してくれるので、用事があってもメッセージで送るだけだったので、少しおかしいなと思った。

「ごめん、電話出てくる」

私は、一緒にいる人間に断ってから、通話ボタンを押した。

「どうしました?」
「美空ちゃん……ごめん……」
「あの、声、おかしくないですか?」

中野さんお得意のハキハキした滑舌が、ほんの少し悪くなっているのが気になった。

「ははは。そんなことより今……出てこられる?」
「今、ですか?」
「もしかして、今厳しい?」

中野さんは事情を知っているから、気を遣ってくれているのは分かった。
でも、幸いなことに、今はまだ大丈夫そうだった。

「どこに行けば良いですか?」

私がそう言うと、中野さんは

「表参道のこの住所に来てくれるかな?」

と言ってからすぐに通話を切った。
それからすぐ、住所だけが文字で送られてきた。
その文字の並びを見て、私は呼吸が止まりそうだった。

何故なら、その住所に存在するのは、あの理玖のお店だったから。
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