十年越しの溺愛は、指先に甘い星を降らす
急いで駆けつけると、あのカフェモカ色の扉には「closed」の看板がかかっていた。
本当に入っても良いのか躊躇ったが、ドアそっと開けてみた。
ベルの音が鳴ると同時に

「美空ちゃん、こっち」

と、中野さんの声がした。
私は急いで中に入り、奥へと進むと、あのソファのところに3人いることが分かった。
理玖と中野さん、そしてもう1人は……。

「美空ちゃん……」
「葉月さん、どうしてここに……」
「お前ら、知り合いなのか?」

理玖が、怒った声で話しかけてきた。
どうして、この3人が同じ場所にいるのかと、中野さんに聞こうとして、またもや驚かされた。

「な、中野さん!?その顔は……」

中野さんの左頬が、思いっきり腫れていた。
明らかに、誰かに殴られたようだった。

「ま、まさか……」
「美空」

私が尋ねる前に、理玖は怒りを隠す様子もなく、私の名を呼ぶ。

「この男は、お前の婚約者だろ?それなのに、何で他の女と肩を抱き寄せながら歩いてるんだ?」

私は、この説明である程度状況を察してしまった。
その上で、私は全てを理玖に説明しなくてはいけないのかと、少々頭が痛くなった。
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