恵那が目を覚ますと、ソファではなく布団に包まれていた。寝室の横のドアからシャワーの音が響き、泰生がそこにいることは明白だった。

 もういいや。ここから出ようなんて考えないようにしよう。仕方ないから、二日間だけは泰生と過ごしてあげる。

 たとえ体だけの関係だっていいじゃない。気持ちが伴っていないことは嫌だけど、好きな人に抱かれることは嫌じゃない。

 シャワーの音が止まる。もう少ししたら出てくるかしら。逞しくて魅力的な体を想像して、急に恥ずかしくなる。私、今でもこんなに泰生が好きなのね……。

 その時になって、不倫相手との修羅場を思い出した。泰生がスマホを隠してるから、あの後何かがあったとしても知る由もない。でも本当はその方が幸せなのかもしれないわね。だって自分勝手な男に振り回されて、悪者扱いされているんだから。

 ドアが開いて泰生が出てくると、恵那は掛け布団を体に巻いて、なるべく泰生の顔は見ないようにしながら浴室に入ろうとした。

「私もシャワー借りるね」

 しかし腕を掴まれ、動きを止められてしまう。なんだろうと振り返ろうとしたら、泰生が恵那の首の後ろにそっと触れた。

「何?」
「……傷がある。痛むか?」

 いつの傷だろうか。恵那は首を横に振る。泰生は眉を寄せてその傷を見つめてから、傷口にキスをした。思わず恵那の体が震えた。

「あの男と女……クソっ」
「なんで泰生が怒るのよ。意味わかんない。とりあえずシャワー浴びさせて」
「あ、あぁ、悪い」

 泰生の手から解放されると、恵那は布団を彼に投げつけドアを閉めた。