あれから様々なことがあった。三田は泰生に手を出した後に、警察官にも手を出してしまい、傷害罪と公務執行妨害で逮捕された。ただ泰生の件に関しては、恵那に手を出さないという条件で不起訴となった。

 しかし恵那との不倫については、彼女のスマホに残されたメッセージのやり取りや証言などから、男側が彼女を騙したことが立証され、その報告書と引き換えに、妻は恵那を訴えないことを決めたのだ。ただその報告書が証拠にもなり、妻側の離婚調停を優位に進められそうだった。

 そんな中、泰生はまるで計画していたかの如く、双方の両親への約束を取り付け、二人の結婚が報告された。

 しかも互いの両親はそうなることがわかっていたように、
「ここまで長かった」
と揃えて口にしたのだ。

「私、泰生を好きだなんて言ったことないけど」
「よく言うわよ。窓から泰生くんが帰るのを待ってたり、朝もわざと時間を合わせてたじゃない。あれでバレないと思ってるの?」

 恵那の母親の話を、泰生は嬉しそうに聞いていた。

「知らなかったな。そんなに俺を想ってくれていたなんて」

 そして今まで見たこともないような優しい笑顔を浮かべた。

 逆に泰生の家では、彼の裏の顔を知ることになった。

「恵那ちゃん、スクランブルエッグが大好きだったでしょう? 泰生ったら、恵那ちゃん好みのふわとろスクランブルエッグが作れるようになるまで、勉強以上に研究してたのよ。今まで一体どれだけのスクランブルエッグを食べさせられたかしら」
「母さん!」
「それに恵那ちゃんのお母さんにお願いして、いろいろ写真ももらったりしてね。携帯の待受なんていつも恵那ちゃんだったよな」
「父さん!」

 ムキになって怒る泰生を見るのは初めてだったので、恵那は嬉しくてつい頬が緩む。

 これからはこんな姿も見られるのかもしれないと思うと、胸が熱くなった。