「はい」

それはニキにも指摘されたことだし、身に染みる。
しかし課長はずっと前から、私が頼まれてキャパオーバーの仕事を引き受けているのは知っていたのだ。
それで放置していたのに、どうして今頃注意してきたんだろう?

「ったく、アイツのせいでオレまで怒られたじゃないか」

ぼそっと落とし、ちっと忌ま忌ましげに課長が舌打ちをする。

「もう行っていいぞ」

けれどまだそこに私がいたと思い出したのか、しまったといった顔をしたあと、邪険に手を振った。

席に戻り、言われたとおりに申請書を埋めていく。
これはよかったような、悪かったような。
まあ、臨時収入ができたと喜んでおこう。

――その後。

「桜井さーん。
この仕事、頼まれてくれなーい?」

終業間際、女性社員から両手で拝まれる。

「ええっとー」

笑顔が引き攣らないか気を遣う。
これって昼間、部内一のイケメン社員に頼まれ、いい顔をして引き受けた仕事だよね。

「私、急用ができちゃって。
ね、お願い」

さらに彼女は拝んでくるが。

「すみません、私も用事があるんです」

にっこりと笑顔で返す。