競馬場で騎手に逆プロポーズしてしまいました。
歩きだす


「さくらっち、今日はアタシがおじさま看てるから。全然寝てないでしょ?今日はゆっくり休みなよ」

お父さんが入院中して3日目、由良先輩が応援に駆けつけてくれた。

「……すみません、お願いします…」

この3日、確かに不安で夜もろくに眠れなかった。お父さんの病室に通って、就活サイトに登録しながら職探し。狭心症についても調べて、健康管理には食事が大切と改めて感じたから、栄養学の本を書店で買って勉強してた。

アパートに帰って汚れ物を洗濯機に入れてボタンを押したあと、スマホでライムの画面を出す。

(やっぱり、既読はついたけど返信がない……さくらくん、忙しいの?)

だめ、とわかってるのに。ついついライムの通話ボタンを押してしまった。今は午前10時……調教は終わったはず。


(お願い……さくらくん、声をきかせて)

祈るような気持ちで待っていた……。通話が繋がった瞬間、飛び上がりそうなくらいに嬉しかった。

だけど。

『はい、もしもし?』

あの美女の声が、スピーカーから聞こえてきて。

『翔馬なら忙しいから後でかけてちょうだい…あら、翔馬』『おい!…』

プツ、とそこで切れたけど。
確かに、さくらくんの声がすぐそばでも聞こえた。

(さくらくん……あのひとと一緒にいるの?私のライムには返信くれないのに…)

失望が、胸にズシンと重くのしかかった。


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