極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません

逃げ出した彼女 side太郎

朝起きると、美貴さんの姿がなかった。

寝室もリビングもキッチンもきれいに片づけられていて、美貴さんの荷物だけが消えている。
あまりにも突然のことに、この部屋に美貴さんがいたこと自体が幻だったんじゃないかと思ってしまうくらいだ。

「それにしても・・・」
一人頭を抱えソファーに沈み込んだ。

これだけきれいに掃除をしたくせに、置手紙1つ残さずに姿を消した美貴さん。
薄情と言うか、かわいくないと言うか、本当に呆れてしまう。

ピコン。
メールの受信。

慌てて見ると、
「なぁんだ」
父さんからだった。

『今日は何時頃来るんだ?母さんがお茶の用意をするって言うんだが?』

そう言えば、実家に寄ってから東京に戻ると連絡したんだった。

父さんと結婚する前にカフェを経営していた母さんは、美貴さんとの意気投合していた。
自然派志向で料理も手作りにこだわる母さんと、同じくライフスタイルにこだわりを持つ美貴さんはとても気が合ったようだ。
当然今日も楽しみにしていたんだと思うが・・・さあ、困ったなあ。
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