極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません

仕事のピンチと嫌な記憶

太郎さんとのこと考えると悩みは尽きないものの、平日は仕事に専念。
きちんと働いているからこそご飯が食べられて、マンションにも住めて、タロウだって飼える。社会的自立を目指すなら仕事が優先事項と私は仕事に集中した。

「美貴さん、これ見てください」
そう言って私を呼ぶのは大学生バイトの沙月(さつき)ちゃん。

何かあったのかなと店の隅のテーブルに置いたパソコンを覗くと、
「嘘」
声が漏れてしまった。

そこにあったのはうちの店への誹謗中傷。
『高いばかりで品質は最低』
『オーガニックなんて嘘っぱちで、人口色素や人口甘味料などが混入している』
『店員の態度が悪く、返品にも一切応じない』

「これ全部嘘ですよ」
沙月ちゃんは怒りながら言ってくれるけれど、
「確かに」
みんな嘘だね。

でも、『天然素材の店コットンハウス』の口コミとしてあがってしまっている以上、世間は少なからずこの書き込みを信じるだろう。
それも、あくまで個人の感想や体験談として書きこまれたからには簡単に削除することもできない。投稿する側にだって自由はあるんだから。

「いいんですか、きっとあの子の仕業ですよ」
「うん」
それは私にもわかっている。
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