4番目の彼女

6.霜月は繁盛期

 木の葉が色づき小春日和のうららかな季節になると、筆耕の仕事は忙しくなってくる。
 年賀状やお歳暮の準備、新年に向けての看板やチラシ用の干支の文字などを揮毫(きごう)したりするのだ。
 今日はおせちのカタログ用に『おせち』という文字を納得いくまでひたすら書いている。この文字をデザイナーさんがパソコンに取り込み加工する。本来は書道家の仕事であるが、社内筆耕はこういう事も請け負っていたりする。

 そんな、にわかに忙しくなった私へ今夜もお誘いのメッセージが届く。

 ”ドラマの続き、今夜も見においでよ”

 確かにドラマの続きは見たい。徹志くんに会うのも楽しい。
 だが、さすがに四日連続はきつい。主に運動不足による筋肉痛が辛い。ダンサーの体力怖い。そうか、だから何人もお相手が必要なのか。

 ”ごめんね。今日は残業もあるし、疲れてるからまた今度”

 ”わかった~残念。また誘う”

 あっさりとした返事に若干さみしい気もするが、うん、これでいい。会いすぎるときっと好きになりすぎちゃう。
 今は、仕事を大事にしなきゃ。周りが見えない恋はしない。
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