たとえ、この恋が罪だとしても
第8章 とめどなく心惹かれて
〈side Ayano〉

「なんだか、いつもの文乃と違うね」
 俊一さんにそう言われる。
 唇が触れあう寸前に。

「えっ?」
「いや、いつもだったら恥ずかしがって、ぎゅっと目を閉じちゃうのに。今日はぼくのことずっと見つめているから……」

「そ、そうかな……今日は俊一さんのことを見ていたくて……会えない間、ずっとこうしたかったからかな……」

 なんて嘘つきなんだろう、わたしは。
 心のなかで自分をなじった。

 目を閉じないのは、他の人のことが脳裏に浮かばないようにしているからなのに。

「好き……だよ」

 でも驚いたことに、罪の意識が媚薬のようにわたしの心や身体を刺激した。

 その反応に俊一さんもいつもより興奮を覚えたようだった。
 
 俊一さんがわたしのなかに入ってきた。
 ざわざわと全身が震える。
 こんな風に感じたのは初めてだった。
 
 彼がわたしのなかで弾け、同時にわたしも、これまで感じたことのない極みに達した。
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