手を伸ばした先にいるのは誰ですか
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「ただいま」
「おかえりなさいませ、美鳥様。朱鷺様からお話は伺いました。おめでとうございます…にはまだ早いですが…まずは茶会へご一緒させていただきます」
「西田さん、ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします」
「迷惑なんてことはございません。嬉しい娘の結婚準備です。お任せくださいませ」
「…ありがとう…冴子さんには私が話をします」

研修から戻って西田さんと言葉を交わしていると

「美鳥、冴子さんのところへ今夜行くか?西田と帰ればいい」
「そんな急にご迷惑でしょ?」
「いえ、美鳥様から早くお話していただかないと私が口を滑らすかもしれませんから、どうぞ。電話だけ入れておきます」
「ありがとうございます」
「俺は今夜亨さんと会う。ここの懐石の個室取って」
「はい」

朱鷺ももう動いているらしい。すぐにデスクに戻り個室の予約をすると、様子のおかしな遠藤さんに声を掛けた。

「遠藤さん…具合悪いですか?大丈夫?」
「朱鷺様に仕事を山積みにされただけで問題ありませんよ。さて、ちょっと思いつきがありまして私、企画部門へ行ってきます」
「仕事山積みなのに…思いつきですか…いってらっしゃい」

仕事が山積みなのにデスクを離れる遠藤さんを不思議に思いながら見送ると

「美鳥は社内外メールと郵便関係を二人に回さないで一人で出来るな?量が多いが西田たちは今銀行のことで手がいっぱいだ。今から1週間ほどは一人で頼む」
「わかりました」

朱鷺の指示には納得だ。単純に日都銀行口座を空にすればいいのではない。他銀行口座の用途を相談して考えながら振り分けていくのだろう。大変な作業だ。
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