手を伸ばした先にいるのは誰ですか
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「朱鷺…あ…もちろん西田さん遠藤さんも、聞いて頂いていいですか?」

茶会のあと、いつもの出勤をしているだけなので何日経っても私の耳には変わったことは入ってこなかった。お付き合いをしているとなるとまた違うのだろうが…

「美鳥、昼休憩まで俺たちに遠慮してたのか?」
「あ…そういうわけでもないから大丈夫」
「…まあいい、どうした?」
「北海道の7月のフェアは表に出したから、次は8月に何かするでしょ?でも川崎さんも本業で忙しくて…結局何も決まってないよね?」
「ああ、美鳥がアイデアくれるのか?」

カツ丼を食べながら、真っ直ぐ確信を持って聞いてくる朱鷺に

「アイデア以前に質問があります」

と言うと

「はい、美鳥様どうぞ」

西田さんがお箸を置いた。

「写真で見ただけなので質問なのですが、あのホテルの小さな噴水のある庭は散策用に作られている?」
「はい、もっと大きな噴水が作れたと思うほど広々とした庭ですね。北海道らしいラベンダーなどを取り入れたナチュラルガーデンです。綺麗ですよ」
「散策以外に活用は?」
「1階のカフェレストランは庭側が全面ガラス張りなのでカフェから眺められます」
「そうか…出入口が問題ですけど…テラス席を作って、アルコール提供も夕方からでなく午前中も出来ればいいかなって思ったんです」
「理由をお聞かせください」

遠藤さんに頷き、連泊から西洋人の休暇を思い浮かべたこと。彼らは観光地を回り続けるのではなく、お日さまの元でただリラックスして、ひたすら話をして過ごすことも多いこと。そしてその手にはアルコールがあることも多い。

「日本なので全く同じ必要はありませんが例えば…フレッシュフルーツがいっぱいのFruit punchをアルコール入りとノンアルコールで準備するとか、サングリアとか…あとは…紅茶とワインを組み合わせてワインカクテルが出来るそうなのでアイスティー感覚で出すとかが出来れば、観光に行かない1日をリラックスしてホテルで過ごしていただけるかと考えました」
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