こんなのアイ?
twelfth chapter
「こんなつもりでなかったんだけど?」
克実の車の中で思わず愚痴る。克実のマンションに泊まり始めると毎朝事務所まで車で送って行くと言われる。昨日も事務所前で車から下りる時に出会った税理士先生に何かあったのかと心配されてしまった。
「いいじゃないか、あと3ヶ月ないくらいのことだ。平日だけ数えたらそう多くない。梅雨入りしてみろ。絶対に感謝するぞ」
そう言われれば返す言葉もない。
「ありがとう、いってきます」
「あっ、俺午後は看護師候補の人と会うから間に合わないかもしれない。帰りは皆藤さんに頼んである。じゃあ頑張れよ」
私が車から下りると、克実はそう言い手を振って行ってしまった。克実と悠衣は直接連絡を取り合うようになり、それが私の送迎のシフトを組むような感じで呆れてしまう。
「おはようございます」
「おはよう。今日も車かい?仲のいい兄妹だね」
先生はすでにパソコンを叩きながら笑う。
「中埜さんの後任の方の面接、明日するよ」
「ご迷惑おかけしてすみません」
「いやいや…そりゃあ中埜さんがずっといてくれればそれが一番いいけど、話を聞くと兄妹の夢が叶うような形の再出発だからね。応援するよ」
克実の動きからも、こういった先生との話からもいよいよだなと思う。そして緊張感が増してくる。