こんなのアイ?
third chapter




 肉バルから明日で3週間という11月の第一金曜日。仕事を終えた私は克実へのプレゼントを選ぶため百貨店に来た。

 誕生日プレゼントというのは毎年同じシーズンに選ぶので難しい。克実へのプレゼントは財布→マフラー→ワイン→セーターのローテーションが出来つつあり、今年はマフラーかな。マフラーの時は合わせて小物を選ぶ。前はマフラーと手袋だったはず…今年はニット帽にしようかな。顔が小さい克実に似合うはずだ。そう決め彼が好むブランドの店へと向かうと、モノトーンが多い彼の装いのアクセントになりそうなモスグリーンのカシミアマフラーと同じくカシミアのニット帽を選んだ。包装をしていただく間に色違いのニット帽とにらめっこする。素敵だな…私も欲しいな。ベージュ?グレー?克実のプレゼントを選ぶより迷っていると包装を終えた顔馴染みの店員さんが‘中埜さんにはベージュ’と声を掛けてくれる。

「じゃあベージュでお願いします」

 メンズ店だけど思いがけず気に入った物に巡りあえて気分が上がる。足取り軽く階下へ降りると‘Diamante Kai’が目に入り社長とデザイナーの二人を思い出した。

 ここは高級店で私が入るような店ではないのだがローズクォーツを見つけたあの日はまず通路から見えるように飾られていたアメジストのピアスとネックレスに目を奪われた。そして小さな文字のプラスカードが‘Diamante Kai’の価格帯と異なる事に克実と目を合わせ、見るだけ…と初めて店内に入り、その一角にある‘Pietra Kai’の存在を知った。そこで目にするものはどれも私の心を弾ませときめかせ…少し見るだけのはずが…その日一番気に入ったローズクォーツのピアスとネックレスを克実が買ってくれることになったんだ。それが父の日のプレゼントを選びに行った6月のこと。そして優しい兄は9月の私の誕生日にラピスラズリのピアスとネックレスを‘Pietra Kai’で選んでプレゼントしてくれた。
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