こんなのアイ?
fourth chapter




 悠衣はあの後マンションまで送ってくれ、荷物が重いからと5階の私の部屋の前までやって来て

「これでいつでも誘える。またな」

 と私の額にキスをひとつ落とし帰って行った。そんなに重くないのにって思っていたら…部屋の確認に来たって事だったか…さすがだな、侮れない。

 そして翌日の今日は仕事を終えて江戸切子の店に来た。一華の結婚のお祝いに江戸切子のペアグラスを送ることにしたのだ。美しい紋様にあれこれ迷いやっとロックグラスに決めた。ロックグラスという名前だが蕎麦猪口のようにも使えると思うし沢山使ってもらえると嬉しいなと思いながら発送をお願いし、小さな店を出ようとした時、その入り口で人とぶつかりそうになる。

「すみません」
「愛実?」

 相手がブレントだったことに驚いたが、何年も前から私をバーで見かけていたと昨日悠衣に聞いたところなので彼らと生活圏が同じなんだと理解する。

「こんばんは。ここに買い物?」

 ブレントが店内をチラッと見て聞いてくる。

「うん、ちょっとプレゼントで…ブレントもここ?」
「近くに来たから少し見て行こうかなって…ここは美術館や博物館の値打ちがあるからね」
「そうね、初めて来たんだけど素敵だった。じゃあごゆっくり」

 軽く手を振り帰路につくはずが

「愛実、もう帰る?」
「…帰る」
「食事まだだよね?週末は会えなかったけどせっかくここで会えたんだから、僕と一緒に食事しようよ…ね?」

 引き止められてしまった。
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