寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
十三
「「ガァオォォォォォォーン」」


 とつじょ、獰猛な獣の雄叫びが聞こえた。
 こんな危機迫るときに新たな敵がでた……もう無理だ。


「「ギャアオォォォォォォン」」


 獣はもう一体いる……どちら共に大地が震える雄叫びを上げた。……でも助かった。その声でワーウルフの攻撃が手前で止まったのだ。ワーウルフも気になるのか声の方に向き「グルルルルル」喉を鳴らし警戒し始める。


「いたぞ! 冒険者とワーウルフだ!」


 大きな声と足早で数人がこちらに近付く。た、助かった……王都からようやく騎士団かみんなが来てくれた。

 声の主はガチッと地面に大きな盾を構えた。


「「【シールド!】冒険者たち俺の後ろから動くなぁ!! 盾役、ご苦労、後は俺が引き受ける!!」」


 大きな声を上げて、ごつい鎧を付けたナサがシールドを張った。騎士団ではなく、みんながここに来てくれたんだ。ナサは盾を構えワーウルフと対峙した。


「「いまから、お前の相手は俺だぁ!! 来るがいい、ワーウルフ!!」」


「ワオォォォォン!!」


 ナサの挑発を受けたワーウルフが盾にぶつかる「キャウウウン」大型ワーウルフがナサの盾に鳴き声を上げて吹き飛んだ。

 凄い。ナサの盾は大型ワーウルフの突進にもピクリともしない。余裕があるのか普通にアサトを呼んた。

「おーい、アサト隊長こっちだ」

 ナサが手を振り亜人隊のみんなを呼んだ。私はみんなに見られる前に、転がってそばの茂みに身を潜めた。





 ナサの所にアサト達が合流した、彼らはワーウルフに驚いている様だ。

「こんな王道のど真ん中にワーウルフが出るなんて、初めてじゃないか?」

「そうだな、他のモンスターは見たがワーウルフは初めてだ」

「私も初めてですね。ここの奥にある北の洞窟でも見たことがありません。このワーウルフはどこからやってきたのでしょうか?」   


「おい、ナサ、ロカ、怪我人もいるんだ。検索は後にして先にワーウルフをやっちまうぞ!」


 アサトは大きな斧を片手で、軽々持ち戦闘体制に入る。その後ろの方でロカさんは怪我をした冒険者にヒールを掛けている。カヤとリヤは冒険者を守るようにクローを構えていた。

(もう安心だ……この場を離れよう)

 わたしはみんなに見つからないよう、茂みの中を進もうとした。ガサッと草を踏んだ音にワーウルフが反応する。


 やばっ、こっちを向いた。


「おい、茂みに隠れている奴。俺のシールドから出るな! お前を守れなくなるだろう!」


 ナサは盾を構えながらわたしに叫ぶんだ。そのナサの声は威圧だビリビリと体に響いた。ごめんなさい、ここから動きません。


「「ガァオォォォォォォン」」


 アサトが雄叫びを上げて、ワーウルフの意識を自分の方に向けた。

「ナサ! お前は一旦、シールドを解除してワーウルフを威嚇しろ、あいつが怯んだら一気に俺が叩く!」

「了解!」

 ナサは盾を置き立ち上がった、ワーウルフを見据え息を吸い込み牙を剥く。


「「ギャアォォォォォン」」


 大地、周りが振動するほどの威嚇だ。その、ナサの威嚇にワーウルフが怯んだ、隙にアサトが斧を振り上げてワーウルフに飛びかかった。


「ディィァアーッッッツ‼︎」


 ザシュッとワーウルフの首をはね、ボドッと地面に落ちて転がるワーウルフの首。その後にドサッと大きな体が倒れる。すごい彼らが来てあっという間に倒してしまった。

 だけど強制的に召喚されたワーウルフを消すには、額に見える黒い魔法陣を壊さないとダメだ。首が落ちたあともズル、ズルと、引きずるような嫌な音が聞こえる。

 ワーウルフの首は体と、くっ付こうと動きだしている。それに気付かないのかアサトとナサは集まり話しをしていてる。やはり彼らも倒し方を知らないみたいだ。

 早く教えないと、わたしはナサに向けて叫んだ。


「ナサ、ワーウルフの額にある魔方陣を壊して!」

「はぁ⁉︎ 魔方陣?」


 話を止め振り向いた彼らは気付いただろう。切られても尚、動くワーウルフの体を……。一瞬、ナサは眉をひそめて、はぁーっと大きく息を吐き、複雑な顔を浮かべた。

「お前は……くそっ!」

 拳を握り締めワーウルフの額にある、黒い魔方陣を拳で破壊した。「【ガリィィィン】」と砕けて、ワーウルフが黒い煙を上げて消えていく、そのあとボトッと黒い骨が落ち黒々しい煙もやもや出している。

 よかったこれで終わった。わたしは見つかる前に帰ろうと、茂みをかき分けてこの場から離れようとした。

「おい、茂みにいる奴、待て!」

 いきなりナサに呼び止められた。茂みから見えた彼の顔は"なんで、テメェなんかに呼び捨てされなきゃいけねぇんだぁ"と、言っている顔だ。

「出てこい、出てこないんなら……」

 ……来ないで。

 ナサはこちらに来ようとした足を止めて、道に落ちたワーウルフの骨を拾おうとした。わたしへ咄嗟に茂みから立ち上がり叫んだ。

「ダメ! それに触ってはダメなの!!」
「あぁっ?」

 ナサは手を引っ込めて、こっちを睨んだ。

「おい! なんでこれに触っちゃいけねんだぁ?」

「そ、その黒い骨は呪われているの。国から召喚士を呼んで処理して……いや、してください」

「ふーん、そうかわかった。でっ、お前は誰だ? なんで俺の名前を知ってる?」

 いつもミリア亭で見るナサとは違い、人間大嫌いオーラがバチバチに出ている。わたしは……わたし、怖い、前の旦那に剣さえ握れておけばいいと言われた、剣を握る女は……嫌われる。

 あんな寂しく、辛い日々が終わり。
 いまの楽しい日々を失いたくない。

 ……意気地なしでごめんね。
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