「帰れるわけないだろう? 顔合わせするまでここで暮らすこと、仕事も退職の連絡を入れておいた」
「……っ何を勝手に!」
「口答えするんじゃない、結婚するんだ。仕事を続けられるわけがないだろう」
そっか、そうだよね。
結婚したら、仕事なんてしなくてもいいんだ……
「退職するなら、挨拶だけでもさせてください」
「だめだ、嫁入りするまでこの屋敷から出ることは許さない。もちろんスマホで連絡することもだめだ。スマホは預かっておく」
な、なんでそんな……
「お前の部屋も用意したからそこで過ごせ」
「……はい」
後ろで待機していた榊原家の執事に父は指示すると私をその用意した部屋へ案内された。
「……では、夕食のお時間になりましたら食事をお持ちいたします」
私が頷けば執事は部屋から出て行った。そっとドアに近づき、ドアノブを開く方向に捻るが開かない……徹底的に私をここから出したくないんだなと思う。
実子にこんなことするなんてとは思うが、これには理由がある。私は正妻の子ではなく……愛人の子どもだから。