今から四年前。
私は母の並木杏と二人仲良く暮らしていた。裕福ではなかったが、とても幸せだった。
「――え、癌……お母さんが?」
「うん、そうみたい。もう、治療しても治る見込みもないらしいの」
いつも明るく元気に笑う母はいなかった。それからひと月も経たないうちに亡くなった。
葬式は母方の親戚の方が手伝ってくれてなんとか済ませることができたが、私には頼れる当てがなかった。お母さんからは父は死んだと小さい頃から言われていた。
だから、一人でなんとか生きていこうと思って高校も退学を考えこれからの生活の道筋を立てていた時にある男性が家に訪ねてきた。
「初めまして、莉杏ちゃんかな?」
その男こそが実父である榊原 雅である。
初めのうちは優しく声を掛けてきた。本当に父なのか疑っていた。