腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる
15章:夢ではない夜

 その日の夜、仕事を終えたリク先生と私は、一緒に家に帰ってきた。

 時間が一秒でも惜しくて、でも、今日は仕事でバタバタしていて汗をかいていたので、どうしてもシャワーも浴びたくて。

 そう思っていたら、リク先生が「一緒に入らない?」と提案してくれた。

 恥ずかしかったけど、私はその提案にコクン、と頷く。

 バスルームにシャワーの流れる音が反響していた。
 後ろから大きな太い腕に抱きしめられて後ろを向くと、リク先生の優しい笑顔がそこにある。

 目を瞑ると、キスをされて、ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスを繰り返される。
 いつの間にか、シャワーの音は聞こえなくて、二人で夢中でキスを交わした。

 振り向いた私の右手を彼の大きな左手が包む。
 汗ばむ額にキスをされたあと、

「かわいい、もも」

 目の前で先生が優しく微笑む。その声に、目に、胸の奥がきゅんとする。

「ずっとこうしたかった。優しくするから」

 気持ちが、身体が、ふわふわする。
 まるで、リクさんのことを知る前、よく見ていた夢だ。

 やっとまた先生とこうしてられる。
 またキスをして、離れた瞬間、私は何度も何度もおぼろげに呟く。

「先生……好き、大好き、好き……」

―――今度こそ、夢じゃありませんように。

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