〈side Natuki〉
その日の朝
まぶしい……
地下鉄の駅から地上に出ると、外は目がくらむほどの陽光に満ちていた。
3月初旬。空気はまだまだ冷たいけれど、柔らかい陽ざしはすでに春の気配を感じさせる。
空は青く澄み、風もおだやか。
でも、今のわたしには好天はなぐさめどころか、憂鬱な気分にいっそう拍車をかけるだけ。
明日はやっと土曜日。
この一週間は本当に長かった。
うとうとしても、すぐ目が覚めてしまう日が続き、慢性の寝不足状態。
それがもう、ひと月あまり続いている。
ちゃんと眠れるようにならないと、仕事に支障をきたしそうで怖い。
週明けに有給を取って、近くの心療内科を受診しようかと考えているところだった。
勤めている会社は、大正年間に創業した大手繊維メーカー。
わたしはその総務部に所属している。