甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
「この数字、桁違ってない?」
 案の定、厚労省に提出する書類のチェックをしていた水野課長から指摘された。
 ……月曜日、やっぱり休み取らなきゃ。

「すみません、すぐに訂正します」
「植田さんがこんなミスをするなんてめずらしい。何かあったの?」
「いえ、ただ少し寝不足が続いていて」

 水野課長は二児の母にして、会社で着々と地位を築いている、憧れの上司。
 彼女は眼鏡の奥からわたしの顔をじっと見た。

「顔色悪いわね。相談があるならのるけど?」
「いえ、たいしたことではないので。課長にお時間を割いていただくほどでは」
「そう?」
「ご心配おかけしてすみません。それから、忙しい時期ですし、急で申し訳ないのですが、来週の月曜日お休みをいただけますか?」
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