甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 彼は飲み終えたふたりのカップをトレイにのせて、立ちあがった。

「でも……はい、それじゃ、って諦められるほど、俺の気持ちも軽くないんだ。もし、植田さんの気持ちが少しでも俺に傾いたら、そのときは付き合ってくれる?」
「今……お約束はできないです」
「じゃあ、これまで通り、会社で出会ったとき、声かけていい?」
「はい、それは」

 そう言うと、島内さんはようやく笑顔になった。

「まあ良かったよ。植田さんに嫌われてないことがわかっただけでも」

 
***

 ふーっ。
 家に帰りつくと疲れを感じて、着替える前にソファーに腰を下ろした。

 本当に意外だった。
 島内さんにとって、わたしなんて完全にその他大勢のひとりだと思っていた。
 だからまさか告白されるなんて、思いもよらなかった。

 わたしだって、彼は素敵な人だと思うし、もちろん嫌いなわけじゃないけど……

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