甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
「そういえば、だいぶ有給溜まってたわね。いいわよ。部長に言っとく」
「ありがとうございます」
「1日じゃ無理かもしれないけど、リフレッシュしてきて。ただでさえ年度末で忙しいときに、植田さんがこのまま使いものにならないと困るから」
「はい」

 わたしは会釈し、席に戻るために踵を返した。

 ――別れてくれないか……

 恋人からつきつけられた(やいば)のような言葉。
 あれからもうすぐひと月が経とうとしている。
 でもあの日から、わたしのなかの時間は止まってしまった気がする。

 7年間付き合った彼の名前は、友田裕樹(ともだゆうき)
 某教育大の同級生。
 在学中から教師に向いていないと気づき、一般企業に就職したわたしと違って、彼は初志貫徹。
 採用試験に合格し、今は出身中学で英語を教えている。

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