甘やかしてあげたい、傷ついたきみを。 〜真実の恋は強引で優しいハイスペックな彼との一夜の過ちからはじまった〜
 俺がそこまで酒に強くないことを熟知している栗原はテキーラ抜きのサンライズ、つまりただのオレンジジュースを俺の前に置きやがった。

 どうしても泊めないつもりだな。わかったよ、くそっ。

 あー、俺も早く、植田さんと甘い一夜を過ごしたい……
 いや、一晩なんかじゃ、ぜんぜん足りないけど。

 オレンジジュースを飲み干し、傷心を抱えて、ひとり栗原の店を後にした。

***

 それからの3カ月ほどは、殺人的に忙しく、植田さんとまったく出会えない日々が続いた。

 焦りが募る。

 実は営業の男どものなかで(おそらく他の部でも)植田さんはかなり人気がある。

 ぐずぐずしてるあいだに、他の奴に先を越されたらと思うと気が気じゃない。
 そろそろ真剣に彼女を口説かないとヤバい、と思っていたところ……

 まさか、こんな思いがけないチャンスに恵まれることになるとは。
< 86 / 164 >

この作品をシェア

pagetop