甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
double punch*ダブルパンチ





はぁ…水を片手に出るのはため息ばかり…

大学卒業後デパートに就職したあと、たった1年での転職活動は困難を極めていた。退職には私なりに大きな理由があったが、それを聞く前…面接にたどり着く前に書類だけで‘続けられない人’のレッテルを貼られているようだ。

このままでは地元へ帰って実家暮らし?それは嫌だ。決して実家が嫌なのではない。でもここを離れたくない。

「今日は?」
「どこからも連絡ない」
「もうさ、いっそのこと、履歴書に‘前職退職理由はセクハラです’って大きく書けば?」

私の部屋でセクハラを強調して言う町田瑠璃子は、大学の入学式以来ずっと仲の良い友人だ。同じアパートの同じ階の端と端に住んでいるという偶然もあり、別々に就職したあともこうして部屋を行き来する。

「セクハラを強調する女も敬遠されるよね…きっと」
「あー紫乃の言う通り…うん、それは言える」
「永遠に男女の感覚の違いは平行線」
「エロいね、を誉め言葉だと思っていたり?」
「そうそう。加齢臭させながら胸元じろじろ露骨に見て言ったらキモいわ…完全に性的対象として見てるってバレバレやん。こっちは制服着てんねん」
「あははっ…出た、紫乃の関西弁」

両親が関西出身で関西生まれの私、花園紫乃はたまに関西弁がでるらしい。小学校から東京暮らしなのでたまにだが。

「瑠璃子、髪色変えた?」
「わかる?紫乃の色を真似てみた」
「ふふっ…また?」
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