甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






夢唯さんは高校卒業後、夜の世界一筋の俺たちよりひとつ年上の女性だ。‘夢’という源氏名で2、3年ごとに高級店へ引き抜かれていたようだ。今は夜の世界からは抜け、ドレスショップオーナーだ。誠は何でも屋をしながらホストをしていた時期があり、そこで二人は知り合った。どっちも客なんだろうと最初は見ていたが、どうも違うようだった。

「誠は他とは違う高級ホストクラブを持ちたいと言っていたし、夢唯さんはドレスアップをトータルコーディネートできる店を持ちたいと思っていたところで意気投合したというか、馬が合うんだろうな。互いに客観的に経営のアドバイスをしあって、時々派手にケンカして…まだケンカ中か?大丈夫か?と思うくらいだけど、二人とも他の誰かと付き合うわけでもなく行き来を再開するんだよ」
「それで真麻ちゃんがパートナーって言ったんだね」
「そうだな。結婚もしないし、一緒に暮らしもしない。それぞれの自立性が強烈だから…でも何かあると頼るのは、誠は夢唯さんで夢唯さんは誠」
「まこちゃんは壱とも馬が合うでしょ?」
「ああ…俺も誠で誠も俺ってところもあるが…」

濡れた手をタオルで拭き、紫乃の腰を引き寄せる。

「紫乃がいてくれると、俺すごく安定してるんだよな…誠にも言われた」
「…そう?」
「俺の安定剤。俺は誠たちの距離感を否定はしないよ、二人とも生き生きしてるから合ってるんだろう。でも俺自身には無理だ…いつでもこうして紫乃に触れたい」
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