甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》







「お義父さん、お昼お義母さんのいなり寿司で一緒にお昼にしましょうか?」
「ありがとう、紫乃ちゃん。半年後くらいにまた誘ってくれるか?今日は帰るよ。ゆきちゃんと一緒に横になってて」
「じゃあ、また来て下さいね。春になったら私と雪乃がお義父さんの方へ散歩もできると思います」
「ちょうどいい距離だよね。楽しみがたくさんあるね。紫乃ちゃん、今の授乳は大変だけど、来年の今頃はもう授乳の大変さを忘れて追いかけ回す大変さを感じると思うよ?壱が1歳から幼稚園に入るまでの間が母さんの人生で一番痩せていた時期だよ」
「それほど動き回るんですね…」
「男の子だから余計にそうだったのかもしれないけど、その時期が母さんは大変そうだった」
「今の動かない時と全然違う大変さや…大丈夫かな…」
「壱も仕事の融通が利くし、うちも近いから協力はできるよ。紫乃ちゃんはゆきちゃんがどんどん成長する、その過程のどれも楽しんでくれたら嬉しいと思う。昨日の夜、母さんとそんな話をしてたんだ」
「…ありがとう…お義父さんもお義母さんも大好き」
「嬉しいねぇ。壱」
「何?」

ここで俺?

「夜中に出来る仕事は夜中にするとか、受注を減らすとか、今はしっかり紫乃ちゃんのサポートしてくれよ。1年や2年働かなくてもいいくらいだろ?」

もう減らしているって言いたくなったが、雪乃の世話しろではなく紫乃のサポートという言い方をした父さんを評価して言わない。本職で働かなくてもたまにブログを書いて、ここの家賃収入があれば十分生活していけるのもその通りだ。

「任せろ。俺が紫乃にしんどい思いをさせるはずがないだろ?出産の辛さだけで一生分しんどかったんだ。絶対に大変な思いはさせない」

紫乃の感激する視線を意識しながら父さんにはっきりと宣言した。
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