長谷川さんの自宅の鍵を持ってはいたけれど、一度も使うことはなかった。必要なかったから…その自宅を見てと言われてオフィスの上の部屋へ来たのだけれど

「ひろ…っ」
「オフィスと同じ大きさだけど?こっち…2部屋好きに使って」

ドアを開いて見せてくれた部屋は、貸してくれるのが納得できるほど見事に何もない部屋だった。

「こちらをお借りします」
「オーケーだけど、自宅内の敬語はペナルティ」
「…?ペナルティ?」
「何にしようか?」
「何にもしないで…」
「考えておく。じゃあここにベッドを入れるとして…キッチン見て。紫乃が借りる部屋なんだから不自由ないようにしないと」

キッチンには最低限のものは揃っているようだ。

「長谷川さん、料理するんだね」
「パソコンからの気分転換程度にはする。冷蔵庫も自由に使って」

彼はそう言い冷蔵庫を開けるが、水とビール、マヨネーズとケチャップくらいしか入っていない。ホテルにいたからね。

「どこで食事するの?ソファーのとこ?」
「そう。でもキッチンに近いこっちにテーブルを置く。リビングで食うと、いつも片付けが面倒になるから」