義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「あとは、叔母夫妻は雄太郎が天ケ瀬の要職につくより、蘭奈を俺の妻にして、実権を握ろうと方針転換している。そういった意味では面倒だが、俺はおまえ以外を妻にする気はないから安心しろ」

面倒な敵ばかりだ。今更ながら、義父と義兄が私をこの争いから長くかばってくれていたのだと知る。

「お兄ちゃん、わかった。気をつけます。お兄ちゃんの迷惑になりたくないし」
「おまえは昔からそう言って、俺と親父に気を遣ってばかりだな」

義兄はふふと笑う。

「気を遣ってくれる気があるなら、もう一度キスをしてくれないか?」

そう言って両手を広げて待っている。
なんでそうなるの。そう思いながら、私は義兄の唇に抗いがたい魅力も感じていた。
ついさっきまで交わしたキスがもう一度ほしい。義兄とのキスは、甘くてとろけそうで身体がじわじわと熱くなって……。

私はふんと息をつくと、駆け寄って軽くキスをした。すぐに逃げようと思ったのに、がっしりと力強い腕につかまった。

「お兄ちゃん!」
「その呼び方もいいが、たまには名前で呼べ」
「だめ! お兄ちゃんだから! キスはしたし、離して」
「足りない」

大きく口を開き、捕食するように口づけられた。たっぷりと口腔をまさぐられ、きつく舌をからめられると、全身の力が入らなくなってしまう。鼻に抜ける声が漏れ、それがまたいっそう義兄を煽るようだった。

幸い、キス以上のことはおこらなかったが、私は何分もの間、そうして唇をむさぼられつづけた。
私の本心なんて、この人には全部お見通しなのだろう。



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