義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
4.積年の愛を



タクシーから転がるように飛び出して、ホテルのロビーに入った。
義兄が食事をすると言っていたのは、三階のフレンチだったはず。二階まで正面の豪奢な階段をかけあがり、そこからさらに三階まで階段を使う。フレンチの店内に入ろうとして、視界の端にふたり連れが見えた。
長い廊下の最奥、エレベーター前にいるのは義兄と蘭奈さんだ。
蘭奈さんが手を引き、義兄は力なく首を振り、離れようとしている。あきらかに足元がおぼついていない。

「お兄ちゃん!」

私は叫んだ。ものすごい勢いで駆け寄って、とびつくように蘭奈さんから義兄を奪還する。

「きゃあ! あなた……! 何しにきたのよ!」

蘭奈さんが驚いて悲鳴をあげた。ここにいるはずのない私を見て、鬼の形相で怒鳴る。負けじと怒鳴り返した。

「蘭奈さんは、何をする気だったの? 丞一さんに何をしたの?」
「ぼたん……」

義兄が私に寄りかかりながら、必死に足元を踏ん張っている。やはり何か薬を飲まされたに違いない。

「こんなやり方卑怯です! 兄を道具扱いしないでください!」
「何が卑怯よ。天ケ瀬の金目当てで近づいたあんたたちの方が卑怯じゃない。母娘そろって男に取り入って!」

「母まで馬鹿にしないでください! 私は……最初から丞一さんに釣り合う女だなんて思ってない。だけど、子どもの頃から真剣に丞一さんを愛しています! あなたに言われるような安い感情で丞一さんを想っていません!」

義兄が私の身体を後ろから包んだ。温かだけど、頼りない抱擁。
私は上半身をねじり、兄の腰に手を回し身体を支えた。
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