義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「すみれさんの病気がわかったのは再婚後じゃない。再婚の三ヶ月前だ。余命宣告されるような病状だと知って、親父は再婚を持ちかけた。世話になったすみれさんに満足な治療を受けさせるため、そして遠くない未来ひとりぼっちになるぼたんのため」
「お母さんとお父さんは、恋で結びついたんだと思ってた。違うの?」
「ああ、どちらかというと友情婚だったそうだ。お互い愛したのは亡くした伴侶だけ。でも、お互いに情はある。すみれさんは申し訳ないって遠慮し続けたそうだ。それを親父が押し切った。一日でも長くぼたんと過ごせるようにしようって」

義父は私と母のために再婚を決めたのだ。私の面倒を見てくれたのも、最初から覚悟したうえでのことだったのだ。

「なんで、もっと早く教えてくれなかったの? 私、何も知らなかった」
「すみれさんと親父の結婚理由を知ったら、ぼたんはいっそう天ケ瀬家に恩を感じるだろう。そこに俺が告白したら、断りきれない。もちろん俺は好かれてる自信があったけれど、引け目を理由に俺のものになってほしくなかった」

だから、両想いになった後に教えてくれたんだ。
私は涙ぐみ、目元をぬぐった。

「お父さんにありがとうって言わなきゃ。お母さんの最期を守ってくれて、私の未来を守ってくれて。お礼を言わなきゃ」
「俺には?」
「私の全部をお兄ちゃんに。……丞一にあげる」

ささやくと、顔が近づいてくる。何度となく重ねた唇はもうお互いの温度を知って、すぐに馴染んでしまう。

「ん、丞一」
「もっと呼んでくれ、ぼたん」

互いの名を呼び、私たちは再び夜までじっくりと互いの身体を味わった。



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