義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「さあ、これから買い物でいいのか?」
「うん、お父さんにシャツを何枚か贈りたいの。父の日はお花だけだったでしょう?」

先日、義父にも改めて交際を報告した。将来的に結婚をしたいということも。
義父は大喜びで、母の墓前に報告しようと言ってくれた。義父は友情で母と結婚したという事実についても、この時あらためて御礼を言うことができた。

『すみれさんには丞一が小さいときに、本当にお世話になったから、できることをしてあげたかっただけだよ』

義父は温かい笑顔でそう言った。

『結果、丞一とぼたんが縁で結ばれたんだから、よかったと思ってるよ』

私は義父と養子縁組をしている状態だけど、民法上でも義兄妹の結婚は可能。挙式は内々でいいだろうということになった。天ケ瀬家の親戚も会社関係者も不在でいいと義父も丞一も言い切った。

叔母夫妻や従兄妹たちは、私たちのことを知っている。蘭奈さんに丞一がはっきり言った。愛しているのはぼたんだ、と。
しかし原賀家からも、他の親戚からも、交際からひと月が経つが、いまだなんのアクションもない。

いや、もしかすると丞一や義父のところにはなんらかの連絡がいっているのかもしれない。
雄太郎さんや蘭奈さんを使って、天ケ瀬グループを手中におさめたがっている叔母夫妻が黙っているとは考えづらいもの。丞一も義父も、私に知らせないようにしている可能性はある。
私を守りたいと思ってくれるふたりの気持ちは嬉しい。でも、私ひとり守られているのはなんだか気が咎める。
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