雨上がりの景色を夢見て
不思議な出会いだった。

貴史くんのお母さんとバッタリ会い、雛さんの同僚の人にも出会い、その人が、まさかの弟の顧問の先生だという驚きの繋がり。

「…すごい巡り合わせ」

と呟いたものの、これは、俺のよこしまな気持ちが原因なのだ、と思えてしまう。

貴史くんのお墓参りに行けていなかったのも、行く勇気がなかったのも、逃げていたのも全部本当のこと。

ただ一つ、俺は誰にも言っていない自分の心の中にだけ押し込めていた気持ちがある。

高校に入学して、

貴史くんの横にいた雛さんを初めて見た時から

雛さんに、想いを寄せている。

すでに、尊敬する貴史くんの、大事な人になっていた雛さんだから、気持ちを伝えようなんて思わなかった。

ただ、心の中で想うことは許して欲しいと思っていた。

大好きな貴史くんに話しかける時の、貴史くんへの憧れの気持ちは本物。隣の雛さんへの、恋心があったのも本当。あの頃の俺は、毎日毎日、そんな2人に会えることが本当に幸せだった。

だけど、

貴史くんを失った時から、雛さんとはそれまで以上に関わりが薄れた。

卒業間近、学校で見かけるようになっても、かける声が見つからず、お互い素通り。

そのまま長い年月会うことはなかった。



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