雨上がりの景色を夢見て

side 高梨兄妹

車の運転をしながら、中川先生のくれた飴玉の事を思い出す。

意外だった。

〝魔法の飴〟と言った時の、中川先生の表情は、普段、仕事で見せることのない柔らかいものだった。

きっと、小さな妹さんから貰った飴だからだろう。

それにしても、今日の坂本先生の言葉には驚いた。

俺、スマホ見てそんなに嬉しそうな表情は出てたのか?

あの日、中川先生が家に泊まった日の翌日、休日の部活指導の合間の昼時、職員室で昼食をとっていた俺のスマホが鳴った。

いつも通り、夏奈が行き先を伝えるために送ったメールだと思って、カフェオレを飲みながら何気なくメールを開く。

『ゲホッ…』

危なく、カフェオレを机の上の白い書類に吹きかけそうになり、慌てて口を抑える。

『…ゲホッ、ゲホッ』

胸をトントンと叩き、落ち着かせる。

『大丈夫ですか?』

斜め向かいの、吹奏楽部顧問の坂本先生が、急にむせた俺に驚いている様子だった。

『だ、大丈夫です。すいません、お食事中に』

そう言って、机の上に置いたスマホを手に取り、画面をもう一度見た。

まじか…。

俺は小さく心の中で、そう呟いた。
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