雨上がりの景色を夢見て
「自分だけじゃなくて、周りの人の体調の変化にも敏感で、…だから、6月に雛ちゃんが体調崩していたのもすぐに気がついたんだと思うよ?」

貴史のお墓参りの時のことを思い返す。確かに、足元は確かにふらついていたかもしれないけれど、元々足元の良くない道だったから、たいして気にしないことだったと思う。

すぐに声をかけてくれて、おでこに手を当てた夏奈さんの行動は、迅速だった。

「そうだったんだ…」

「そろそろ、高速乗るよ。2時間位かな」

少ししんみりした空気が流れると、話題を変えるように高梨先生が言った。

ナビに映る行き先を見て、まだ行ったことのない場所だということに気がついた。

「私、今から行く場所、初めて」

「良い所だよ。砂浜も綺麗だけど、ちょっと歩いたところにある展望台から見える景色も素敵でね」

「前にも来たことがあるの?」

「うん。でもかなり前だよ?いつだったかな…そうそう、大学卒業した後だったかな。家族4人で、近くの温泉宿に泊まったんだ」

そういえば、高梨先生と夏奈さんと会った時も海の見える温泉宿に行った時だった。

「温泉好きなの?」

「父さんと夏奈がね。俺はのぼせやすいから温泉というよりは、宿の豪華な料理が目当て」

そう言って、高梨先生は少し照れくさそうに笑った。





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