雨上がりの景色を夢見て
「夏奈、あっ、双子の妹も喜ぶと思います」

「双子なのね。じゃあイケメンの高梨先生とそっくりなのかしら?」

「えっ、あっ、いや…」

母の冗談混じりの言葉に、恥ずかしそうに頭を掻く高梨先生の姿が、少しおかしくて、思わず私も笑ってしまった。

「雛、幸せそうで嬉しいわ」

そう言われて、母を見ると優しく微笑んでいて、私も母に微笑み返す。










「高梨さん、娘のことよろしくお願いします」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。では、またあらためて来たいと思います」

丁寧に頭を下げる高梨先生を見て、母は、本当に嬉しそうに合わせてお辞儀をした。

「高梨さんのご両親にも、ご挨拶しないとね」

顔を上げて、そう言ってふふふっと笑った母に、高橋先生がはっとして話し始めた。

「そのことなんですが、両親は、普段海外にいて、おそらく連絡すればお正月には帰ってくるとは思うのですが…なかなか…」

申し訳なさそうに説明する高梨先生。

そういえば、最近あまり日本に帰っていないと話していたにを思い出した。

「あら、お忙しい方なのね。では、ご両親のご都合が良い時に会えたら嬉しいわ」

母は特に気を悪くするわけでもなく、むしろ感心している様子だった。そのことに安堵の表情を浮かべた高梨先生を見て、私もほっと胸をなでおろす。

「ありがとうございます。日程のことも打診したいと思います」

高梨先生は丁寧にそう答えると、再び頭を下げて、車へと向かった。私も母に軽く手を振り、助手席に乗り込んだ。





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