雨上がりの景色を夢見て

side 高梨兄妹

薄暗い廊下を歩いて、おそらく、すでに夏奈が戻っているであろう部屋に向かう。

中川先生が言っていたように、夏奈は〝明るい人〟だ。けれど、その明るさゆえに、弱い自分を人前で見せたく無いと、頑なに思っている。

ガチャッ

鍵をかざし、ロックを外す。扉を開けると、

「夏樹、おかえりー」

と、夜とは思えない元気な声が聞こえた。

「長風呂だったわね」

ノンアルコール飲料とおつまみをテーブルに広げ、すっかり晩酌気分の夏奈が、イカを咥えながら言った。

「いや、夏奈より先にあがってたんだけど、すれ違った」

「あっ、ごめーん。今まで何してたの?」

軽いノリで、悪びれもなく謝り、質問する夏奈と向かい合わせに座る。

「中川先生と世間話してた」

「雛ちゃんと会ったんだ?」

雛…ちゃん?

ああ、中川先生の下の名前か。

「そんなに仲良くなったのか」

夏奈のコミュニケーション力の高さには驚かされる。

「雛ちゃん、良い子よね」

相当中川先生のことが気に入った様子で、もう一本、ノンアルコール飲料の缶を開けた。



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