パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
12.最終判断と紙飛行機
 日の落ちかけた海際のカフェで夕陽が沈むのを楽しんで、二人は車に戻った。
 紬希を助手席に乗せ、運転席に乗り込んだ貴堂が紬希に向かって話しかける。

「さて、どうしよう? このまま帰る? もし差し支えなかったら夕食を一緒にどうかな、と思うんだけど」
 紬希もこのまま帰るのは何だか淋しいような惜しいような気持ちだった。

「ご飯、ご一緒したいです」
「ん……」
 少し考えている様子の貴堂が車のエンジンをかけた。

「もし、良かったら僕の家に来ませんか? 外で食べるには寒いし。帰りはきちんと送るので」
 本当に、貴堂は紬希のことをとても考えてくれているのだとよく分かる。

 ゆっくりと言葉を選びながら話してくれているのが紬希にも伝わるからだ。
 紬希は確かに外出は苦手なのだけれど、今日、貴堂と一緒にいて出掛けるのも悪くはないと少し思い始めていた。

 それに何より貴堂が不在の間も貴堂のことを考えたりして、こんな風に一緒にいられる時間はとても貴重で、一緒に時間を過ごすことがとても幸せなことだと、今日は改めて感じることができた。

 だから、自分のそんな気持ちを正直に伝える。
「私、貴堂さんと一緒にいるの、とても好きです」
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