パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
3.幼なじみの恋
 帰りの車の中、雪真は運転しながらも紬希の様子がいつもと違うことが気にかかっていた。

「紬希……大丈夫?」
「ん? うん。平気よ?」

「ごめんね、シャツのこと、上司に言ってしまって」
「ううん!」
 紬希が首を横に振ると、その長い髪がさらさらと動く。

 雪真が運転しながら見たその顔は、上気して頬が綺麗なピンク色になっている。
 両手を前できゅっと組んで、紬希はとても嬉しそうに、にこにこしていた。

「褒められてとても嬉しかったの。雪ちゃんが他の人にもそんな風に言ってくれていたなんて、すごく嬉しい」

 紬希、それは僕が他の人に伝えていたことが嬉しかったの?
 それとも、他の人に褒められたことが嬉しかったの?

 今更だけれど、雪真は失敗したと思っていたのだ。

 紬希をあの場所に呼ぶのではなかった。
 先日のシャツを受け取った時のことである。

 滞在先のホテルでシャツが仕上がったと聞いて、楽しみにしていた雪真は一刻も早く紬希に会いたくなってしまい、帰りは送るからと空港まで来てもらったのだ。

 人の少ないところと思い、待ち合わせにはデッキを指定した。
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