パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
8.ここにいなくてもあなたを思う
『では、今度会う時に福岡のお土産を持って行きますね。とても美味しいから楽しみにしていて。では、おやすみなさい』

 今日はオフだったという貴堂から少し前にメールが来て、紬希も"おやすみなさい"と返した。

 一昨日は千歳で昨日は福岡だと言っていた。
 こんな風に貴堂はとてもこまめにメールをくれる。

 もちろん乗務中は無理だろうから家に帰ってからとか、一昨日は羽丘に戻ったよ、とおそらくは空港から連絡をくれた。

 普段飛行機に乗らない紬希からしたら、千歳まで行って同じ飛行機で帰ってくるということにピンと来ないのだが、勤務ならばそういうこともあるのだと分かった。

 そんな風に紬希が知らないことを日々のメールで貴堂がたくさん知らせてくれるのが、とても楽しい。
 国内線でも必ずしも現地でゆっくりするものではないのだと知った。

 千歳は行きは晴天だったけれど、帰りは少し天気が悪くて……とメールをもらった。
 その日の紬希はついニュースの天気予報で、翌日貴堂が行くと言っていた福岡の天気をチェックしてしまったほどである。

──よかった……。晴れだわ。

 貴堂は仕事も飛ぶことも本当にとても好きなのだ。
 そんな貴堂を紬希は尊敬しているし、こうやってメールでやり取りをすることも楽しい。
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