独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
バッドタイミング 晴臣side

一年前に見合いをした。政略的な意味ではそれ程重要な相手とは言えないが、祖父の友人の孫ということですんなり話がまとまった。

見合い相手の前村瑠衣は老舗料亭の令嬢だ。

彼女の実家の料亭で初めて顔を合わせたとき、清楚な美人だなと思った。

少し目じりの上がった大きな目が美しく、染めたことのないような艶やかな黒髪に、思わず指で触れたくなった。

座っているときは華奢な印象だったが、立って並ぶと意外と長身で、百八十五センチある晴臣と丁度釣り合いが取れていた。

上品な立ち振る舞いから、礼儀作法などしっかり躾けられて育ったのだと伺える。

しかし箱入り娘という程ではないようで、家業とは関係のない分野の仕事に就き、一社会人として自立している女性だった。

本音を言えば見合い相手に大して期待していなかったから、瑠衣との出会いは思いがけない幸運だった。

晴臣は結婚に理想を持っていなかった。

両親は政略結婚だし、幼い頃からの親友も先日見合いで結婚してそれなりに上手く家庭を運営している。

それとは逆に最高の相手に出会ったと恋愛結婚をした同僚は、新婚時の盛り上がりが嘘のように今離婚問題を抱えている。

理由はお互いの価値観と生活習慣の違いだそうだ。

やはり基本的な習慣や考え方が近くないと苦労するのだろう。
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