独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「結婚記念日だっただろ。出来れば帰りたかったが、どうしても俺が対応しなくてはならない案件だったんだ。海外VIPが滞在する部屋で問題があって……」

どうしても帰れなかったんだと理解して欲しくて、普段よりも口数が多くなる。

例えば自分が記念日を軽視しているとか、彼女に誤解をされたくなかったのだ。

傷つけたくなかった。

しかしその心配は全く無用のものだったようだ。

「私は大丈夫だから気にしないで。仕事の対応を優先したのは当然のことだもの」

瑠衣は明るく優しくとても爽やかな笑顔でそう言ったのだから。

(本当に大丈夫そうだな)

悲しませるのは嫌だったが、こうも平然とされると複雑な気持ちになる。

(瀬尾と付き合ってるときは違かったんだろ?)

気付けば卑屈な発想が浮かんでいた。

その後、瑠衣とは穏やかに過ごしたが、結局深い話をする機会は得られなかった。

(瑠衣は俺のことをどう思ってるんだろうな)

解決しようとしていた悩みはむしろ深くなるばかりだった。


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