「瑠衣、どうしたの?」

測量中に突然動きを止めしまった瑠衣に、那々が心配そうに声をかけて来た。

「ご、ごめん。なんでもないの」

はっと我に返り作業の続きに入ったが、まだ心臓がドキドキしている。

那々に補助を依頼された測量現場は、神谷ホテルグループ本社の近くだった。

空地にビルを建設する為の、現況調査をしていたのだ。

二時間程度の作業だが、もしかしたら夫が通りかかるかも……そんなことを考えていたら本当に晴臣の姿が視界に飛び込んで来た。

声をかけようかと思ったけれど、仕事中であることと、夜の話合いの前に普通に声をかけるのもなんとなく気まずく、そのまま見送ることにした。

彼にしてはのんびりした歩みで駅の方に向かっている。

今日は遅くならないと言っていたから、それ程遠くまでは行かないだろうな。

などと考えていたそのとき、晴臣に女性が近づいた。